mornings and nights

おなかに肉腫という病を飼っています

4 // 3

自分のいまの状況をひとに説明しようとするとき、「いま3度目の再発中で…」と言ったあとに、本当に3度目なのか自信がなくなって言い淀んでしまう。はて、「3度目」で正しいんだっけな。2度目の再発までは「じつは再々発しまして~」と、あまり迷うことなく言えたのに。

「再々発」は言葉として言いやすいのだけど、「再々再発」となると、再がたくさんつくから「3度目の再発」と言い換えるようになったが、いつもその数字に自信がなくて、心の中で「ほんとにそうだっけ?」と思う。

こういうときは決まって、小学校の算数の授業で出てきた、木が並んでいる絵がでてくる問題が頭に浮かぶ。ああいう問題が苦手だった。「全部で25メートルある道に、木を4本植えるとしたら間隔は何メートルにすると良いでしょうか?」植木算というんだっけ。今もきらいだな。

🌲 🌲 🌲 🌲

とにかく、「3度目の再発中(で正しいんだっけ)」と思うとき、そういうことを思い出す。今までわたしの身体のなかに、ピノコ*1がいたのは4回なのに3度目の再発。

👻 👻 👻 👻

「1回目の再発」というのは、つまり「1回目の2回目」という意味であることが、言葉のややこしさの元凶なんだろう。もしかすると植木算よりも、「イギリスでは、地上階をground floor、その上の階を1階というから、日本やアメリカと階数の数え方がずれる」という話の方が、ややこしさの種類としては近いのかもしれない。

3 🏢

2 🏢

1 🏢

G 🏢

わたしは身体の話をするのが好きなので、ひとに病気のことを話すこと自体に抵抗はない。でも、「今3度目の再発中で…」と話し出すとき、いつも数字が正確かちょっと自信がなくて、つい不安げなようすでいったん言葉をとめてしまう。

そうすると話し相手は、わたしが病気のことでとてつもない不安を背負っているのだと受け取ってしまうようで、大変気をつかってくれる様子になってしまうのが、ちょっと申し訳ない。もっとスムーズに自信をもって言いたいのだけど、4度目の再発とかになったらもっと自信がなさげに言ってしまうのだろうな。

 

ああ、でも、そういえば。

「もう完全に腫瘍を取りきるための手術をすることはできません」と主治医が言っていた。

「再発」というのは、「いったん腫瘍がない状態になったはずなのに、また出てきちゃった」という状態のことだから、たとえ今後ピノコがふえたとしても、それは再発とは呼ばないのかもしれない。てことは、私はこれから先ずっと「3度目の再発」の状態のままなのだろうか。

これからずっと「3度目の再発中です」と言い続けるのは、それはそれで釈然としないなぁ。

*1:わたしは自分の肉腫のことをピノコもしくはピノちゃんと呼んでいます。